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<退職金を考える>

退職金制度は法令で定められたものではありません。なので、
退職金制度を設けるかどうかは会社の自由ですが、制度を設けると(就業規則に規定したり、退職金規程を作成したり)賃金と同じ取り扱いを受けます。(税や社会保険などは通常支払われる賃金とは異なる処理をおこないますが)終身雇用、年功賃金、企業内労働組合が根付いた我が国において退職金制度は非常に重要な意味を持ちました。年功賃金は初任給は労働能力と比較し低く設定されます。(当然、入社間もないわけですから労働能力もそれ程高いものとはならないでしょう。)やがて、就業期間により労働能力は上昇しますが、上昇を続ける訳ではなく一定水準で横ばいになるといわれています。しかし、賃金水準は上昇を続け一定の年数で労働能力と交わり、やがて、賃金水準が労働能力よりも高くなります。職種によりますので、一概にいえるものではありませんが、一般的には45歳前後が労働能力と賃金水準の交差する時期と言われております。賃金水準の上昇を表す昇給基準線(賃金カーブ)の上昇率を一定の時期で抑えなければ、労働の対価としては釣り合わず、払いきれなくなってしまいます。そのため賃金の伸び率を抑え、その分を還元すると言った要素が退職金にはあります

退職金はこのような
@賃金後払い説A功労報奨説B生活保障説としての性格があり、まさに終身雇用を前提とした年功賃金制度である我が国には重要なものでした。近年では、若年層を中心とした就業意識の変化や経済のグローバル化により、終身雇用制が徐々に変貌しつつ状況を感じさせます。年功的要素を全く壊すことは望ましいことではありませんので、終身雇用制が完全に崩壊することはないと思われますがその分、賃金制度が年功主義から能力主義へ更に成果主義と移行し、退職金の在り方も変貌して行くことでしょう。退職金額の算定は、これまでは「退職時基本給」×勤続年数=退職金といった方式が主流でした。年功賃金制度の見直しが進められる中、年功序列を基本とする賃金の考え方をそのまま退職金の計算に使用するといった方法は、いつまでも年功序列の風潮を引きずっていることにしかならず、金額が大きいだけに成果主義や業績主義を標榜しても抜本的な変革にはつながりそうもありません。また、現在の状況では基本給と切り離して設計するほうが望ましいといえます。では、基本給とは別に算定する退職金制度とはどのようなものがあるのか、簡単に考察してみましょう。

<退職金算定方式>
基本給をベースに置かない退職金算定方式の主なものとして
@金額テーブル方式とAポイント方式があります。金額テーブル方式とは、退職金の金額が勤続年数や退職理由、職能資格等級別や等級別勤続年数別など企業独自の理由により定額により設計される方式で、基本給とはリンクしません。また、退職金額も定額で決まっていますから、金額表示により分かりやすく、退職金の世間相場水準(平成12年12月25日東京労働経済局の調べでは「退職一時金のみを支給」している企業の定年時退職金相場は高校卒では1,235万円、大学卒では1,277万円)と比較して検討しやすいといった特徴が挙げられます。しかし、金額が明確である分、修正が難しく、どのような場合にどのような基準で書き換えるのか明確にしておかなければなければなりません。そのため比較的見直しが困難な方式であるといえます。一方、ポイント制方式は、最近よく導入される方式といわれております。
この方式は退職金額の算定基礎をポイント(点数)制にし、ポイント単価を設定することにより用いられます。具体的には勤続ポイント、年齢ポイント、職能ポイントなどを点数化し、累積方式で計算していくことになります。その為、企業への貢献度などに合わせポイント設定を工夫することが可能です。また、中途入社の従業員に対しても、職能資格ポイントなど勤続年数ポイント以外の点数も加味されますので柔軟に対応します。退職金算定の際も累積された点数(ポイント)に単価を乗じれば退職金の額が計算できますので比較的容易です。その他にも、方程式型算定方式(算定基礎額に勤続年数別あるいは等級係数や退職事由係数を乗じる形で運用されます。)といわれるものもありますがあります。
今後、終身雇用制を維持してゆくのは難しく、雇用の流動化にも対応できる退職金制度に見直す際、多くの企業ではポイント方式が最も適しているかもしれません

<中小企業退職金共済制度>
退職金の運用を外部機関に委託する企業も多く、その一つに
中小企業退職金共済制度(中退共制度)があります。中退共制度は、昭和34年に中小企業者の相互共済と国の援助で退職金制度を確立し、これによって中小企業の従業員の福祉の増進と、中小企業の振興に寄与することを目的として国の中小企業対策の一環として制定された中小企業退職金共済法(昭和34年5月9日法律第160号)に基づき設けられた制度です。加入している企業は419,898所(平成13年1月現在)で 加入している従業員数は2,733,130人(平成13年1月現在)となっております。 制度のしくみは事業主が勤労者退職金共済機構・中退共本部と退職金共済契約を結び、毎月の掛金を金融機関に納付します。従業員が退職したときは、その従業員に機構・中退共本部から退職金が直接支払われるしくみになっております。加入は原則として従業員全員が加入しなければなりません。
(但し、期間を定めて雇われている人、試みの雇用期間中の人、休職期間中の人などは加入させなくてもよいことになっています。)掛金月額は5000円〜30000円の16種類です。但し短時間労働者は2000円、3000円、4000円のいずれでもよいことになっています。また、掛け金額の増額はいつでもできます。(減額については被共済者が同意したとき又は現在の掛金月額を継続することが著しく困難であると厚生労働大臣が認めたときのほかはできません。)退職金の支給は一時払いが原則ですが、退職日の年齢が60歳以上であり、かつ退職金額が一定額以上の従業員については、希望により分割払で支給することもできます。 中退共制度の掛金は、法人企業の場合は損金として、個人企業の場合は必要経費として、全額非課税となります。 (退職給与引当金の制度をもっている企業の場合には、共済掛金はそのまま必要経費に算入し、一方の退職給与引当金は、退職金規程の定め方によって、引当金への繰入額を調整することになります。)また
、中退共に新規に加入する場合や掛け金を増額する場合は国からの掛け金助成が受けられます。新規加入の場合は加入月から24月間掛金月額の1/3が助成されます。(平成13年4月以降の新規加入は加入後4か月から12月間掛金月額の1/2※上限5,000円、他に短時間労働者は上乗せされる場合あり)掛け金を増額する場合は増額前掛け金額が28,000円以下(平成13年4月1日以降は8,000円以下)の場合増額分の1/3が増額月から12月間助成されます。退職金額は掛金月額と納付月数に応じて固定的に定められている金額で、現在は制度全体としての利回りを年利3.0%として設計し定められた額です。例えば納付月数が420月(35年)で掛金月額が10,000円の場合は7,386,000円となり、同様に納付月数が120月(110年)で掛け金月数が10,000円の場合は1,408,000円となっております。また実際の運用利回りが年利3.0%を超える場合に、その超える部分を原資として、毎年度厚生労働大臣が定める支給率に基づいて別に定める方法で計算した額が付加退職金として上乗せされる場合があります。中退共に加入する場合も、これらを参考にし、利回りは今後どのようになるのか、掛け金は各従業員の賃金を基準にするのか、それとも勤続年数を基準にするのかなど様々な要素に基づきシミュレーションして決定する必要があります。

<退職金制度の見直し>
退職金の算定方式を見直す場合も、支払を一時金から年金に見直す場合も、中退共制度に加入するなど外部に委託する場合も、単に退職金制度の維持が大変だから見直すだけではなく、企業と従業員の現状に合わせ、お互い工夫することにより負担を軽減するような仕組みを考えていく必要があります。そのために、これからの労使による退職金の新しい仕組み作りの知恵を出し合う時期に来ているのだと考えています。アメリカの401Kプランに負けない「日本の退職金制度」を創っていきたいものです。(社会保険労務士 大月 淳




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