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(6月5日)
<交通事故というリスク>
平成12年東京都内で発生した交通事故件数は91,380件と、ここ10年では最悪の結果となりました。死者413人、負傷者は105,073人と依然高い数字となっています。普段、仕事や通勤などで自動車を使用している方にとっては日頃から安全運転を心がけておられることでしょう。しかし、遅刻しそうで始業時刻に間にあわなそうなときや、お客様と約束していた時刻に遅れそうになったときなど、ついスピードを出しすぎてしまったり、強引に前方車輌を追い越したりしてしまったりという経験をお持ちの方も多いのではないでしょうか。「かもしれない」の運転を心がけていても、「つい」の運転をしてしまう。交通事故は最も予想しがたい身近な「リスク」なのかもしれません。

<交通事故と自動車賠償責任>
自動車賠償責任は、自賠責法に規定される「運行供用者」に責任が追及されます。この「運行供用者」とは自賠法第3条にいう「自己のために自動車を運行の用に供する者」を言います。これは自動車を運行、支配することで利益を得られる者で、例えば従業員がトラックで荷物を運んでいる場合は、その会社が運行供用者となります。即ち、従業員が仕事でトラックを運転中うっかり居眠りをし、前方に走っていた車に追突してしまい、その車に乗っていた人がケガを負った場合は自動車賠償責任は運行供用者である会社にあります。これは、民法第715条(使用者責任)に基づいたものとなっているからです。(自賠法では人身事故のみを規定しておりますので、物損事故については民法第715条が適用されます。)トラック運転手に責任を追及する場合は民法第709条の不法行為責任となります。また、自動車が盗まれその犯人が起こした事故についても「運行供用者」とされ自動車賠償責任を課せられた判例もあります。自賠法においての被害者はこの「運行供用者と運転者以外の者」が原則となります。上記の例であれば、「会社(運行供用者)とトラック運転手(運転者)以外の者」ということになります。

<自動車賠償責任と自賠責保険>

自動車および原動付自転車は、自賠責保険に入ることが強制されています。そのため、新車を購入した場合は自賠責保険に加入しなければナンバーが採れません。車検に出す場合も自賠責保険に加入しなければ車検もとおりません。但し、自賠責保険は契約が強制されているということでこれはあくまで自動車が人身事故を起こした場合、全ての自動車の自動車賠償責任が自賠責保険によってカバーされるというわけではありません。例えば車検切れの無保険の自動車が起こした事故や盗難車が起こした事故などは、自動車賠償責任は追及されますが、自賠責保険ではカバーされないことになります。また、会社に雇われている運転手が起こした事故について、その運転手については自動車賠償責任につい「運行供用者責任」は追及されませんが、自賠責保険はカバーされます。
自動車賠償責任と自賠責保険は必ずしも一致しません。この辺は同じ強制保険でも保険者との契約を前提としない社会保険とは異なる部分の一つかもしれません。この自賠責保険は「人身事故のみ」であることや上限額(死亡3,000万円など)があることなどから、民間の損害保険会社が取り扱う任意保険にも加入する必要があります。

<交通事故と社会保険>
交通事故による負傷が業務上や通勤途上のものであれば、当然、労災保険の適用を受けます。また、これが、業務外のものであれば健康保険の対象にもなります。つまり、交通事故では労災が使えない、あるいは健康保険が使えないなどということはありません。しかし、被害者の二重利得を防止するために損害賠償請求権と社会保険の給付請求権は調整が図られます。実務上は自賠責保険と社会保険との保険者間での取決めなのでしょうか、自賠責保険が先行されるようですが、法的には自賠責保険が先行する旨の規定など存在せず、自由に行使することができることになります。この調整には「求償」(社会保険給付が先行した場合、行なった給付の価額を限度とし保険者が損害賠償請求権を被害者から代位取得する)と「控除」(加害者からの損害賠償が先行した場合は、社会保険についてはその分については給付を行なわない)があります。社会保険においてはこのようなケースを「第三者行為災害」とし、損害の程度や被害者の過失の有無、割合、加害者の賠償資力等によって、例えば通勤途上や業務上の交通事故の場合、労災保険を使うかどうかなどを判断する場合もあります。できれば、使いたくないのが保険(社会保険、生命保険、損害保険問わず)です。私も自動車を使用する機会は多いのですが、これからも「かもしれない」の運転を意識してゆこうと思います。

社会保険労務士 大月 淳



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