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<経営難と採用内定者>
採用内定を受けた学生の採用を、入社までに取り消すことができるか?労働省職業安定局業務調整課の調査によれば、平成12年10月1日時点の就職内定率は前年度と比べると全体的に若干上回りましたが、大学の就職内定率は63.7%、短期大学は36.6%、高校は42.5%と依然厳しい状況になっております。このような厳しい就職戦線の中、内定を手にした学生にとっては、理由はどうであれ内定を取り消されれば進路選択に狂いが生じることになります。当然、企業側も経営が悪化しても、内定取消しは回避するべく対策を行います。経費削減策などのリストラを試みますが、それでも経営再建が厳しければ、いよいよ人員整理をするしか方法はありません。人員整理となれば、「休業手当を支給することによる自宅待機」や「希望退職者の募集」などから進めますが、それでも効果が上がらなければ正社員、試用期間中の者よりも採用内定者を取消すことが優先されることになります。職業安定法施行規則35条2項では、「内定を取り消しまたは撤回するとき、もしくは内定を延長しようとするときは、あらかじめその旨を公共職業安定所に通知するものとする」とされています。
<内定取消しと解雇>
経営の悪化により内定を取り消す場合、それはいわゆる「解雇」に相当するのでしょうか。労働基準法第20条(解雇の予告)では「使用者は労働者を解雇しようとする場合においては、少なくとも30日前にその予告をしなければならない。」「30日前に予告をしない使用者は、30日分以上の平均賃金を支払わなければならない」と規定されています。(ちなみにこの規定は「解雇の手続き」について定められたものであり、解雇予告による「解雇の有効性」を定めているものではありません。)さて、ここで気になるのが内定者は「労働者」といえるのかどうか、ということになります。労働基準法上「労働者」とは「職業の種類を問わず、労働基準法が適用される事業又は事務所(民間企業ではほぼ全て)に使用される者で賃金を支払われる者をいう。」(労働基準法第9条)とされています。「使用される以前」の内定者は学生であり、「労働者ではない」といえます。即ち、労働基準法上の「解雇の予告」の手続きは適用しません。だからといって説明をせずに一方的に内定を取り消すことは許されません。例えば4月1日に入社予定の者が3月以降に内定を取り消されればその者は、大きな損害を受けることになりますので、それなりにきちんと理由を説明をする必要は当然あります。また、内定者が高校卒業予定者の場合は学校長や職安の推薦により就職してきますので、学校長や職安との話合いにより進めることになります。
<内定通知と労働契約の成立>
「採用内定」は会社が学生に対し「内定通知」を出し、それに対して学生が「誓約書」を会社に提出したことによって成立する場合が殆どのようです。この「内定」の成立は「労働契約」の成立と解することができます。「内定」は法文上に規定されていませんので、雇用社会の実情によって判断されることになります。最高裁では「採用内定通知により、その者の誓約書の提出と相まって、就労の始期を大学卒業直後とし、誓約記載の事由に基づく解約権を留保した労働契約が成立したものと認める。」としています。すなわち、企業が「内定通知」により、「4月1日より当社正社員として採用します」と伝え、学生も「誓約書」の提出により、「4月1日より御社に入社いたします」といった契約が成立したと解す事ができます。ただし、その学生が卒業できなかった場合など、採用できない場合もありますので「解約権」は留保されています。また、その他どのような場合に解約権を行使できるかについても、「誓約書」に記載しておく必要があります。
<経営判断と内定の取り消し>
経営が悪化したことによる「内定」の取消しが、たとえ合理性があり有効とされる場合でも、業績の予測見通しを誤った経営者の責任は逃れられないといえます。その為、内定を取り消された者から債務不履行を理由に損害賠償を請求されても仕方のないことかもしれません。しかし、企業側も学生の次なる就職活動に協力したり、和解金を支払うなど誠意を見せることでやがて解決して行くでしょう。採用内定は「始期付解約権留保付労働契約」が成立していると解されますので、「内定の取消し事由」についても客観的合理性が求められることになります。いざ、というときには上記のような条件をふまえた上で誠意を持って対応することが求められるといえるでしょう。(社会保険労務士大月 淳)
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